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12月 5th, 2013
カテゴリ: ニュース特報印刷情報ブログ

コモリ、ランダ社とデジタル印刷機に関する戦略的提携関係強化を正式発表。コニカミノルタとの共同開発も進む

 株式会社小森コーポレーション(以下、コモリ)と、イスラエルのランダコーポレーション(以下、ランダ社)は、コモリが、全ての「ランダ・ナノグラフィ枚葉印刷機」用プラットフォーム(用紙搬送機構)のグローバル・サプライヤーとなること、及びコモリブランドで販売するナノグラフィ印刷機に組み入れるナノグラフィの印刷技術とインキをランダ社が提供するという多面的契約を結び、両社の戦略的提携関係の強化を、11月1日に正式発表しています。

 2012年5月にドイツのデュッセルドルフで開催された「drupa2012」で、ランダ社は新テクノロジー「ナノグラフィ印刷プロセス」を発表し、同会場で5月8日にランダ社はコモリにランダ・ナノグラフィ印刷のプロセスを用いた商業印刷および、その他の印刷市場向けのデジタル印刷機の製造と販売のライセンス供与を行うグローバルな戦略的提携の契約に調印していました。今回の発表は、その契約が具体的な形を成したことを公表するという意味合いを持っています。

○ランダコーポレーションのWebサイト(http://www.landanano.com/
 新テクノロジー「ランダ・ナノグラフィ」の詳細は、こちらのサイトでご覧ください。

 「ランダ・ナノグラフィ」についてランダ社は、数十ナノメーター径のナノ顔料粒子に水を加えた水性インクを使った新しいデジタル印刷技術であるとしています。デジタル印刷の多様性と、オフセット印刷の品質と速度を併せ持った技術であり、オフセット印刷のインキ皮膜の半分の厚みなのでページあたりのコストを抑えられるとしています。また、ナノインクは、ナノ顔料のみを詰めたボトルで提供され、印刷現場で通常の水を加えることで水性インクとなるので、エネルギー効率が良く、環境にも優しいとも述べています。
 ナノグラフィ印刷プロセスは、そのナノインクをインクジェット方式でブランケットベルト上に画像出力し水分を蒸発させた後、印刷用紙などの被印刷体に転写させるという独自の方式を採用しています。すでに乾燥しているナノインクを転写するので、コート紙、非コート紙、リサイクルした厚紙まで対応し、新聞印刷からプラスチック、パッケージフィルム等の軟包装材印刷まで、事前処理やコーティング処理なしで対応可能としています。
 ランダ社の創業者でCEOであるベニー・ランダ氏は、1977年にイスラエルで技術開発会社のインディゴ(Indigo)社を設立し、1993年に新開発の液体インクを使ったデジタル印刷システム「E-Print1000」を発表し販売を開始しており、「デジタルオフセットカラー印刷の父」と呼ばれる技術者でもあります。ヒューレット・パッカードにインディゴ社を売却(その技術は、デジタル印刷機HP Indigoシリーズに受け継がれます)後、2002年にランダ社を設立し、現在に至っています。

 「drupa2012」以降、ランダ社「ランダデジタルプリンティング」の技術陣は、欧州とアジア両方の業界大手印刷機ベンダーからの「ランダ・ナノグラフィ印刷機」用枚葉プラットフォームの供給提案に対する評価を実施していたとのことを、発表の中で伝えています。実際に、ランダ社は、「drupa2012」開催時期と相前後して、4月30日にマンローランド社との提携を,次いで5月2日にはハイデルベルグ社との提携を続けざまに発表していました。
 その結果、「評価を行うにあたり、ランダは、技術力、設計の堅牢性、自動化、信頼性、費用対効果を考慮しました。革新に向かう社風、技術資源、商業的実績、財務的安定性も重要な評価基準でした。1年に及ぶこの評価作業の結論には疑問の余地がありませんでした。コモリは別格であり、明らかにランダにとって最適なパートナーでした。この評価結果に伴い、2014年第4四半期に得意先への納入が開始される予定の、ランダS10ナノグラフィ印刷機用の枚葉プラットフォームをコモリに発注しました」と発表の中で述べています。
 CEOのベニー・ランダ氏は、5月8日の略的提携の契約調印の場で「私どもは、我々の新しいナノグラフィ枚葉印刷機の紙搬送機構の供給者として、コモリと親密な関係を築いてきました。コモリは我々の技術を最初にお見せした企業であり、それはまた、我々のビジョンを最初に共有した企業でもあるわけです。私は特に、コモリがこの巨大な市場でのビジネスの機会を共有する、世界規模の戦略的提携をおこなうことを最初に発表できる企業であることを喜んでおります。印刷業界とその広範な参入市場における重鎮として、コモリはランダ・ナノグラフィ印刷の世界的導入を加速させるための存在です」と語ったとの報道もあり、実際に「drupa2012」にプロトタイプ(試作機)として展示していた実機の枚葉プラットフォームの部分はコモリが製造を担当しています。こういった実績の積み重ねが、グローバル・サプライヤーに選ばれるに至った理由でもあるようです。
 話は変わりますが、コモリは、コニカミノルタホールディングス株式会社傘下の情報機器事業会社であるコニカミノルタビジネステクノロジーズ(以下、コニカミノルタBT)とも、商業印刷市場におけるデジタル印刷機のグローバル販売契約を、2012年2月に締結しています。
 両社は販売契約を締結したことにより、コニカミノルタBTは、自社の主力製品であるデジタル印刷システム「bizhub (ビズハブ)PRESS C8000」を中心とした「bizhub PRESS」シリーズを、日本・米国・欧州・中国の4地域で小森コーポレーションへ供給を開始し、さらに2012年5月からは日本・米国・欧州・中国の4地域で、小森コーポレーションへ「bizhub PRESS」シリーズのOEM供給を開始しています。
 さらに両者は共同で、コニカミノルタIJ(インクジェット)独自のプロセス技術と、コモリの搬送技術と印刷見当精度を融合させた新たなソリューションとしてインクジェットデジタル印刷機の開発を、新たに進めていることも公表していました。
 そして、「drupa2012」において、コニカミノルタブースにUVインクジェットデジタル印刷機「KM-1/IS29(コニカミノルタ名:KM-1、コモリ名:Impremia IS29)のプロトタイプを参考技術展示しています。その後、本格的な技術開発に着手し、今年2013年9月には米シカゴで開催された「PRINT 13」に出展しています。
 「KM-1/IS29」には、コニカミノルタがシングルパス印刷用途向けに新たに開発した「HSUVインク」と高性能インクジェットヘッドおよび画像形成システムを搭載し、プラットフォーム(用紙搬送機構)にはコモリがデジタル印刷機用に新たに開発したシリンダー配列や新型反転機構を装備し、印刷内容に応じて片面・両面印刷を瞬時の自動切り替えを可能とした両面ワンパス印刷を実現しています。

 コモリは、「印刷産業の流れがデジタル印刷機に向いているから、その分野に進出したのではない。あくまでもデジタル印刷は、数ある印刷方式の1つとして捉えている。~デジタル印刷機に特化した開発を行っていくわけではなく、ニーズに応じて最適なオフセット印刷機あるいはデジタル印刷機を提供できる体制を整備することを目的としている」と述べています。
 すでに、ランダ社とコニカミノルタ、どちらのデジタル印刷機にもそれぞれの仕様に合わせたプラットフォーム(用紙搬送機構)を開発し提供しています。これらの動きの中に、コモリの描く今後の印刷事業の方向性や戦略の一端が垣間見えるようです。

【参考資料:竹橋コミュニティプレス「印刷業界ニュース特報」より】
○2012年5月16日『コモリとランダ社-ナノグラフィに関するグローバルな戦略的提携に合意し,drupaで調印!相次ぐオフセット印刷機メーカーによるデジタル印刷技術の発表』

○2012年5月16日『イスラエルのランダ社-品質とスピードで第2のデジタル革命をおこすか?ナノグラフィック・プリンティング技術《前編》』

○2012年5月23日『イスラエルのランダ社-品質とスピードで第2のデジタル革命をおこすか?ナノグラフィック・プリンティング技術《中編》』

○2012年5月24日『イスラエルのランダ社-品質とスピードで第2のデジタル革命をおこすか?ナノグラフィック・プリンティング技術《後編の①》』

○2012年5月25日『イスラエルのランダ社-品質とスピードで第2のデジタル革命をおこすか?ナノグラフィック・プリンティング技術《後編の②》』

○2012年5月31日『コモリ-コニカミノルタと共同開発のB2枚葉インクジェット印刷機「Impremia IS29」(コニカ名「KM-1」)をdrupa2012で技術展示し,OEM機も出展』

10月 29th, 2013
カテゴリ: ニュース特報印刷情報ブログ

日印産連、製紙各社による用紙の一斉再値上げ要求に断固反対を表明

 今春実施された印刷用紙の一斉値上げ表明に続き、日本製紙株式会社から始まった製紙メーカー各社の秋の再値上げ表明が、9月末に出そろいました。各社とも、印刷用紙・情報用紙の価格を改定し、10月21日出荷分より10%以上の値上げを目指すと発表しています。その理由について、春は東日本大震災以降の急激な需要縮小と円高による輸入紙の急増による競合で市場価格が下落した分の価格復元のための値上げであり、秋は円安や古紙の値上がりなどの原燃料高騰によるコスト上昇分を転嫁するための値上げであると位置付けているとのこと。

 一般社団法人日本印刷産業連合会(以下、「日印産連」)は、それを受けるかたちで、10月15日付で「印刷用紙・情報用紙の値上げ反対について」というタイトルの表明書を、日本製紙連合会に提出し、再度の値上げに断固反対であることを表明し、反対理由については以下のように述べています。
 今春にも、製紙各社が4月21日より15〜20%以上の値上げを相次いで表明しており、7月になってやっと製紙各社の値上げ交渉が決着して値上げが実行されたばかりです。印刷会社の多くが、まだ得意先に対して値上げ分を転嫁することができていない状態であるのに、半年も経過しない時点で、更に10%以上の大幅な追加再値上げをいわれても、それを受け入れ印刷価格に転嫁することは、とても得意先から理解されず極めて困難であると述べています。更に、そうした環境下で印刷用紙を再値上げすることは、電子媒体への転換を加速し、印刷需要減退に拍車をかける危険性を孕むこと、そして今回の値上げが印刷需要の減退につながり、印刷会社の経営悪化の重い連鎖から脱却できず、倒産や廃業といった経営危機に見舞われる印刷会社が増大すると予測されることなどを挙げています。
 日印産連としては、これらの観点から、「今回の製紙大手各社による再度の値上げ表明が、とても容認できる状況にあるものではない」として、断固反対するに至ったとしています。
 日印産連は、「印刷を通じて生活・文化に貢献することが使命である印刷産業は、これからも身近で利便性の高い情報媒体である印刷物を広く社会に提供する責任があり、そのためには印刷用紙の安定価格と安定調達は不可欠であります。」と述べ、表明書の最後を「製紙業界と印刷産業界は両輪の関係にあり、今後も共通の認識と相互理解が大切であると考えております。」と結んでおり、製紙各社に対し両産業の更なる発展のための理解を求めています。

 日本製紙連合会が発表した2013年9月の紙・板紙需要速報では、紙・板紙の国内出荷は前年同月比3.5%増と3カ月連続の増加となったとのこと。内、紙は3.6%増、板紙は3.3%増。紙・板紙の在庫は、印刷・情報用紙を中心に減少しているとしています。印刷・情報用紙の国内出荷は、前年同月比7.8%増でやはり3カ月連続の増加。円安の影響もあり塗工紙を中心に輸入紙の需要が減少し、それからの切り替えや消費税増税関連の影響に加え、価格改定(値上げ)に伴う前倒し需要なども影響しているとみられているようです。逆に円安の影響もあり輸出は11.5%増、塗工紙を中心に9カ月連続の増加となったとしています。
 ニュースでは、不動産向けのチラシなどが堅調であるなど、国内需要は一部上向いているとの意見もありますが、全体的には需要は大きく上向いていないとの見方もあります。輸入紙に関しては、製紙各社が国内需給を引き締めたこともあり、輸入紙の需要が増えたという動きはあったものの、円安の影響もあり輸入紙が急激に増えることもないとの話もありますが、今回の再値上げが実行されれば輸入紙の需要が回復する可能性もあるという意見もでています。製紙会社は、国内需給の緩和分を輸出に振り向けるという動きをしたことが輸出の増加につながったようですが、アジア向け輸出価格が低迷しているため、円安でも赤字となるという話も流れています。
 印刷会社にとっては、印刷用紙は原材料費の8~9割を占める存在です。得意先への値上げ交渉が進み、印刷物の価格に転嫁できないと、その痛手は大きいと言わざるを得ず、今回の再値上げ要求に対する断固反対の表明となって表れたということのようです。
 実際には国内事情だけでなく海外事情も大きく影響する時代です。グローバルな視点でみると、両者の置かれている立場や環境、成長戦略には、大きな隔たりがあるのも事実です。両者の今後の動向、展開を注視していく必要があります。

■関連記事■
【2013年3月12日】『日本製紙を皮切に,北越紀州製紙,三菱製紙,大王製紙と製紙大手各社が次々と印刷用紙15%の値上げ表明。王子HDの動向は』

【2013年9月20日】『日本製紙・大王製紙・三菱製紙・北越紀州製紙と相次ぐ、印刷・情報用紙等10%以上の価格値上げ表明』

9月 20th, 2013
カテゴリ: ニュース特報印刷情報ブログ

日本製紙・大王製紙・三菱製紙・北越紀州製紙と相次ぐ、印刷・情報用紙等10%以上の価格値上げ表明

 大手製紙メーカー各社が、今春実施された一斉値上げ後の再値上げを相次いで表明しています。
 日本製紙株式会社は、代理店各社に対して印刷・情報用紙の価格修正を9月10日に表明しました。次いで18日には大王製紙株式会社と三菱製紙株式会社が、翌19日には北越紀州製紙株式会社というように、用紙の値上げが相次いで発表されています。

 日本製紙は「印刷用紙および情報用紙の全品種と加工原紙」を値上げ対象とするとし、大王製紙と三菱製紙は対象製品を「印刷用紙全般と情報用紙全般」としており、北越紀州製紙は「印刷用紙・情報用紙・加工原紙」というように、対象品種の表記に少し違いがみられますが、「値上げ幅10%以上」で「値上げ時期は2013年10月21日出荷分より実施する」という点では、4社とも値上げ幅と時期が同じで横並びとなっています。

 4社は、今回の用紙価格値上げの理由について、ニュースリリース文中で、以下のように述べています。
 日本製紙は、価格修正の理由について「為替の円安傾向が続く中で、各種原燃料価格は上昇基調にあります。当社は原価改善努力を積み重ねてきておりますが、コストアップを自助努力だけで克服することは難しく、製品価格へ転嫁せざるを得ないと判断しました」としています。
 大王製紙の改定理由は、「円安傾向が続く中、各種原燃料価格は上昇基調にあります。弊社は今春、塗工紙・上質紙の価格修正をお願いし、計画通りの改定を行いました。また、あらゆる面でのコスト低減に引き続き取り組んでいますが、原燃料調達価格上昇によるコストアップは吸収し切れないため、上記対象製品については製品価格に転嫁せざるを得ないと判断しました」とのこと。
 三菱製紙は、製品価格改定理由を「弊社洋紙事業につきましては、印刷用紙の国内市況が悪化したことから今春に価格修正を実施させて頂きましたが、為替の円安傾向の継続等により原燃料価格が高騰していることから、収益は極めて厳しい状況にあります。この様な状況下、弊社と致しましては徹底した合理化やコストダウンを図っておりますが、自助努力のみで再生産可能な収益を確保することが困難な状況となっております。つきましては……製品価格の改定を実施せざるを得ないと判断致しましたので、何卒ご理解とご高配を賜りますようお願い申し上げます」と述べています。
 また北越紀州製紙は、改定理由について「昨年来の為替相場変動により原燃料価格が大幅に上昇しております。弊社は継続してコスト吸収努力を重ねておりますが、現状の価格での販売では大変厳しい環境下にあります。諸事情をご賢察頂き、価格改定のご理解をお願い致します」としています。
 各社、多少のニュアンスの違いはありますが、その値上げ理由を「為替の円安傾向が続くことによる各種原燃料価格の上昇によるコストアップ」であるとしている点では違いはありません。

 これより少し前となる6月6日には、北越紀州製紙より色上質紙を値上げするという発表もあり、値上げ幅10%で7月21日出荷分より実施するという表明内容でした。

 更に、もう少し遡ると、先の大王製紙の改定理由の文面の中でも述べられていたように、今春(3~4月)、今年初の大手製紙メーカー各社による一斉値上げ表明がありました。
 その時は、まず日本製紙が、主力製品である印刷用紙の出荷価格を「価格修正」するとして、4月21日出荷分から、現行価格に対し1キロ(kg)当り「15円以上」値上げすると代理店・流通会社各社に対して、3月5日に表明しました。これを皮切りに、翌6日には北越紀州製紙と三菱製紙が、翌々7日には大王製紙が、「4月21日出荷分より、キロ15円以上」と、日本製紙と同じ条件での値上げを相次いで表明し、王子製紙も同様の動きをすることになります。
 2013年7月3日付の日本経済新聞の電子版に、「日本製紙、王子製紙など製紙各社が印刷会社や卸会社に打ち出していた印刷用紙の値上げ交渉が決着した。上げ幅は約15%で、値上げが実現するのは約1年半ぶり。円安で割安な輸入品が減り、印刷用紙の需給が引き締まったため」という記事が流れたのは、つい2カ月前のことでした。製紙メーカーは国内市場の縮小傾向に合わせて国内生産を調整することで、国内市場での過剰在庫を抑制し値下がりを防止する対応策を進めてきており、更に円安で輸入用紙が割高となったため印刷会社が輸入紙を購入するコストメリットが減少してしまったという内的要因と外的要因が、大きく影響して今春の初回値上げを後押ししたという背景があったようです。この時の値上げの際、再度の値上げの可能性もあるというような発言が、製紙メーカーから出ていましたが、いよいよ、今回、現実のものとなったということのようです。王子製紙からの再値上げ表明のニュースリリースは流れていませんが、今後の動向が気になるところです。
 前回の値上げ幅は約15%でしたから、今回の10%以上の値上げが加算されると年内に26~27%以上、用紙代が上がることになります。印刷会社にとって印刷材料費の大半を占める印刷用紙費の再値上げ表明は、印刷業界にとって、かなり大きなインパクトのあるニュースとなっています。今後、印刷業界各社、あるいは業界団体は、今春の値上げ交渉の決着をみた7月からわずか2カ月後という短期間での今年2度目の値上げ表明に、どう反応し、どのような対応策を選択するのでしょうか。

 少し話はそれますが、7月29日には、東洋インキ株式会社からオフセットインキの値上げ(枚葉インキ:60円/kg、輪転インキ40円/kg)を9月1日出荷分から実施するとの表明がありましたが、その理由も各種原燃料価格の上昇によるコストアップを要因として挙げていました。
 今年4~5月にかけて、大手インキメーカー各社によるグラビアインキ製品の値上げ表明が相次いで発表されるという動きがありました。今回の東洋インキのオフセットインキ値上げに続く、大手インキメーカー各社からの表明は今のところないようですが、グラビアインキと同様オフセットインキについても、各社、各種原燃料価格の上昇によるコストアップという値上げ要因を抱えているのは同じなので、オフセットインキに関しても今後の業界の動きが気になるところです。

9月 5th, 2013
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理想科学工業、海外市場向けにA2サイズ対応のデジタル印刷機「RISO A2」を新発売

 理想科学工業株式会社は、海外の印刷業向けに、業界初のA2サイズ対応孔版式デジタル印刷機「RISO A2(リソー エーツー)」を新開発し、平成25年11月からロシアを皮切りに、日本と北米市場を除く海外の各国で順次販売を予定しており、A2サイズに対応したことで、海外市場におけるユーザー層拡大を目指すと、8月30日のニュースリリースで公表しています。

○A2サイズ対応孔版式デジタル印刷機「RISO A2」の画像(理想科学工業Webサイト/ニュースリリース/平成25年8月30日付より引用)

 理想科学工業のデジタル印刷機は、これまでA3が最大サイズでしたが、「RISO A2」は、長年培った理想科学独自の孔版印刷技術を更に進化させ、A2サイズの印刷に対応したドラムを内蔵し、600dpiの高精細な印刷が可能。用紙サイズに関係なく毎分最高100枚のスピードで、多枚数のプリントを高速かつ低ランニングコストで印刷することを可能としたとしています。更に、面付け機能を利用することで、A4サイズなら一度に4枚の印刷ができ、生産性の高いプリントワークを実現したとしています。
 その用紙サイズは、最大624mm×432mm、印字面積は、通常製版モードで596mm×425mm、余白なし製版モードで602mm×425mm、用紙紙質は46~120g/m3の紙厚が可能。インクは環境に配慮した大豆油を使用、21色のカラーインクと50色のカスタムカラーインクのカラーバリエーションを用意し、コーポレートカラーなどの特色インクはオーダーメイドで対応、カラーインクはカートリッジ式ドラム交換なので色換えも手間がかからないとしています。
 タブロイド判の新聞、チラシ、図面などの様々なニーズに応えられるとしており、多品種少ロット印刷が求められる商業印刷分野で幅広い用途で使えるようにしたとのこと。パソコンから直接出力できるので、誰でも簡単に、画像の細部までシャープに再現できるとしています。

 ニュースリリースの中で「長年培った理想科学独自の孔版印刷技術」と述べていることから、ベースとなっているのは「リソグラフ」の孔版印刷技術のようです。
 孔版印刷は、他のトナー方式やインキジェット方式のデジタル印刷機のように無版ではなく、製版工程があります。デジタル印刷機内に原稿データを読み込み、それを元に中にセットされたマスター(刷版)にサーマルヘッドで高解像度の微細な孔(あな)をあけ、細字や網掛け、ベタを再現します。完成した孔版の刷版は自動で、内臓する印刷ドラムに巻きつけられます。印刷ドラムを高速回転させ、ドラム内に設置されたスキージーローラーにインキを付け、刷版の孔(あな)を通った箇所だけにインキがのるという仕組みで印刷されます。
※詳しくは、理想科学Webサイト「リソグラフのしくみ」を、ご参照ください。

 公表されたスペックからは、マスター排版容量25版、1版の製版時間は約60秒との記載があります。
 版をドラムに巻きつけて刷るので、一度の製版で大量の枚数が刷れ、印刷枚数が多くなるほど印刷単価は下がり、トナー方式やインキジェット方式のデジタル印刷機より低ランニングコストで大量印刷できることをメリットとして挙げています。また、専門のオペレーターがいなくても、誰でも簡単に高品質の印刷物ができ、その簡便な操作環境であるとしています。

 海外市場での製品名は「RISO A2」としていますが、中国向け製品名として「RISO RV-A2」という名称であると発表されているので、ロシアについで中国市場も大きな市場として捉えているのかもしれません。また、「本ニュースリリース内で提供されている製品名・時期などは、海外市場を対象とした情報です。日本国内市場は対象としておりません。」という注意書きが見出しの次に書かれているし、発売日として「平成25年11月(予定) 北米・日本国内での発売は予定していません。」とも書かれています。
 他のオフセット印刷と伍する高品質で、「POD(Print on Demand=「プリントオンデマンド」の略。日本では、一般的に「オンデマンド印刷」と呼ばれ、必要な時に必要な部数だけ印刷すること)」を志向するトナー方式やインキジェット方式のデジタル印刷機メーカーが、大きな市場として捉えている日本と北米市場を販売対象とせず(「当面は」ということでしょうか?欧州市場をどうするのかも気になります)、それ以外の海外を市場として捉えるということのようです。「POD」と一線を隔し、「RISO A2」のA2サイズでのプリントを可能とし、低コストであること、誰でも使える簡単な操作性などの特徴を生かし、新興国市場における商業印刷(CP)や企業内印刷(CRD)を主要市場とするプロダクションプリント(PP)分野向け事業に重点を置き、他のデジタル印刷機メーカーとは少し異なる事業展開をするという方針ということでしょうか。

6月 4th, 2013
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DNPメディアクリエイト-「カラーユニバーサルデザイン・マネジメントシステム認証」の事業者認定を初取得《後編》

 《中編》からの続きです。

 《中編》で述べましたように,「CUD検証」制度の審査を受け,対象製品や施設に対して認定を取得するというのは,なかなか大変なことであったようです。

 このような状況であったとはいえ,「CUDマーク」を付けた認証製品は徐々に広がりをみせます。そして「人にやさしい社会づくり」に貢献している企業姿勢を示すとともに、CUD を取り入れていない競合他社の製品に対し差別化を図ることができるなどのメリットが認知されてくるようになります。
 製品に関する広告などの商業印刷物や,企業の環境/CSR報告書などへ「CUDマーク」を表示したいというニーズがでてくれば,短期間で大量かつ多品種の印刷物や映像コンテンツ等でも,CUDマークを表示できるような新しい仕組み(制度)が欲しいという要望も高まってきます。

 このような環境下で,CUDOと大日本印刷の協力体制により「CUDMS認証制度」の開発は進められたということのようです。
 「CUDMS認証制度」は,CUD認証製品の制作に必要な,品質管理の体制,運用ルールの社内教育,制作ツール,人員の要件をマネジメントシステムとして規定し,事業者を認定する制度です。
 この制度を開始することにより,CUDMS認証の事業者認定を受ける企業や団体は,「CUD検証」のように様々な製品を個別案件単位で一々CUDOの第三者認証を申請し認定取得する必要がなくなるので,製品にCUDMS認証マークを付与(表示)することが可能になるので,短期間にCUDの認証を取得できるというメリットを享受することが可能となります。
 CUDOにとっても,さまざまなCUD認証製品を短期間に広く提供することができ,CUDの認知度を向上させることができるという,CUDOというカラーユニバーサルデザインの普及を目的とする団体のメリットがあります。

 大日本印刷は,DNPメディアクリエイト(DMC)とDNP映像センターの両社について,「多様な色覚を持つ人々に配慮して,より多くの人に情報が正確に伝わるようなカラーユニバーサルデザイン(CUD)に基づいたパンフレットやカタログなどの印刷物,株主総会用の映像コンテンツなどを制作しています。これらの制作物に使用する表やグラフなどの色や形状,レイアウト,線の種類や太さ,配色パターンなどに配慮するとともに,見た目にも美しく,目に優しいデザインを提案しています。CUDの実現にあたり,多様な色覚における見え方を疑似体験できる色覚シミュレーションを導入しており,専門スタッフによる制作物の配色の問題点の調査や,調査結果に基づく新しいデザインの検討などに活用しています」と述べています。

 CUDOが,2012年8月の時点で公表している「CUDマーク取得内容実績一例」には,民間企業の【印刷物等】「CSRレポート・パンフレット類」の分野には,以下のような企業名が挙げられています。
 「東京海上日動・住友生命・三菱UFJ フィナンシャル・三井住友海上・ソニー株式会社・千葉銀行・百十四銀行・明治安田生命・第一生命・損保ジャパン・アメリカンホーム・芙蓉総合リース・三井物産・三菱商事・トヨタ・関西電力・九州電力・パナソニック・NEC・日立グループ・東芝グループ・シャープ・富士電機・三菱電機・リコー・富士ゼロックス・鹿島建設・川崎重工・昭和電工・UBE グループ・東レ・コスモ石油・日立化成・三井住友建設・東急電鉄 日本航空・TOTO・YKK・NTT グループ・NTT 東日本/西日本・KDDI・大日本印刷・凸版印刷・東洋インキ・昭文社・第一三共・田辺三菱製薬・アステラス製薬・ヤマトグループ・積水ハウス・ライオン・大王製紙・日本ハム・東京スター銀行・東京信用金庫・京都信用金庫 他200社以上」と,表記されています。
 大日本印刷と凸版印刷,いずれも自社の「CSRレポート」の裏表紙に「CUDマーク」を表示させています(ちなみに,GNPマークは表示されていますが,まだGPマークは表示されていないようです。今後に期待でしょうか……)。また,大日本印刷は,CUDOの企業賛助会員にもなっています。
 両社ともグループとして,積極的に取り組んでいるようすが伺えます。

 DNPメディアクリエイト(DMC)とDNP映像センターのような,企画・デザインから制作までをおこなう会社が「CUDMS認証」の事業者認定を取得するということには,顧客企業に対して,CUDマークを表示することで社会貢献に対する企業姿勢を示せ,カラーユニバーサルデザインに対する積極的な取組みをアピールできるというメリットがあるということです。また,「CUDMS認証」の認定事業者資格を取得していない競合他社に対して差別化を図るという意図もあっての取り組みであったということなのでしょう。
 近年,環境関連の認証制度やマークは,全て覚えきれないほど作られています。印刷物にも沢山の環境マークが,並んで表示されています。CUDマーク表示によって「人に対する社会貢献」に取り組む企業姿勢のアピールというのも,新しい切り口なのかもしれません。
 デザイン会社や制作会社をグループに持っていたり,そのような部門を社内に有する印刷会社などにとっては,差別化を図るための営業ツールとして,当面は有効に働きそうです。